タイヤを交換したお店は、規定のトルクで締めたうえで、返すときに「少し走ったら増し締め(締め直し)を」とお客さんに伝えます。
- 国土交通省によると、令和7年度の大型車の車輪脱落事故は128件。5割以上がタイヤの脱着作業から1か月以内、9割以上が左後輪で起きています。
- 大型車は、交換後50〜100km走ったころに、トルクレンチで規定のトルクに締め直すよう国が呼びかけています。
- 乗用車の店でも、作業の記録を残し、返すときに増し締めを案内する一言を決めておきます。下に案内文の例を載せました。
冬タイヤへの交換が集中する11月から1月は、タイヤが外れる事故も増える時期です。 国土交通省は例年この時期に、タイヤの脱着作業をする事業者へ注意を呼びかけています。 この記事では、国が公表している数字と、お店が作業と返却のときにすることをまとめます。
大型車の車輪脱落事故は、令和7年度に128件起きた
国土交通省は、2026年10月1日に、令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の大型車の車輪脱落事故の発生状況を公表しました。 ここでの大型車は、車両総重量8トン以上のトラックか、乗車定員30人以上のバスです。
| 項目 | 令和7年度の状況 |
|---|---|
| 事故の件数 | 128件(令和6年度の120件より8件増加)。うち人身事故は3件で、3人が軽いけがを負った |
| 起きた時期 | 64件(50%)が11月〜1月の冬の3か月に集中 |
| 作業からの期間 | 69件(約54%)が、タイヤの脱着作業から1か月以内に起きた |
| 外れた位置 | 約95%が左後輪 |
| 直前の作業 | 約85%がタイヤ交換などの作業のあとに起きた |
| 作業した人 | 大型車の使用者(自社で交換)約56%、タイヤ専業店約27%、整備事業者約13% |
国土交通省は、事故を起こした車の多くで、さびの清掃、潤滑剤(すべりを良くする油)の塗布、ナットが滑らかに回るかの点検が足りていなかったとしています。 作業のあとの増し締めや、日々のナットの緩みの確認も、確実に行われていなかったとしています。 作業のときの不備では、どの作業者でも締め付けの力の管理が足りないものが最も多く見つかっています。
タイヤ専業店や整備工場の作業でも起きている
事故の4割ほどは、タイヤ専業店か整備事業者が作業した車で起きています。 自社で交換する運送会社だけの問題ではありません。
ナットは、締めたあと走るうちに緩む
国土交通省は、ホイールナットを締めたあと、初期なじみ(部品どうしが押し付け合って落ち着くこと)によって締め付けの力が下がるとしています。 規定のトルク(ねじを締める力の強さ)で正しく締めても、走ると緩みが出るということです。
そのため国は、大型車について、タイヤの脱着作業のあと50〜100km走ったころを目安に、増し締めをするよう関係団体に求めています。 日本自動車タイヤ協会(JATMA)の配布物も、50〜100km走ったら、トルクレンチを使って規定のトルクで増し締めするよう呼びかけています。
作業では、トルクレンチで規定のトルクに締める
国土交通省の東北運輸局が出している作業管理表の例では、作業を次の順で確かめます。
- 清掃する ハブ(車輪を取り付ける軸の部分)やホイールの取り付け面、ボルト・ナットのさびや泥、ゴミを取ります。
- 点検する ホイールのひびや傷、ボルトの伸びやさび、ねじ山のつぶれを見ます。ナットが手で滑らかに回るかも確かめます。異常のある部品は使いません。
- 潤滑剤を塗る ボルト・ナットのどこに塗り、どこに塗らないかは、ホイールの方式(JIS方式・ISO方式)で違います。車のメーカーの指示に従います。
- 対角線の順に、2〜3回に分けて締める 最後の締め付けは、トルクレンチ(締める力を測れる工具)で、規定のトルクに合わせます。インパクトレンチだけで仕上げません。
- 締めたトルクの値を記録する 実際に締めた値を、作業の記録に書きます。
規定のトルクは、車ごとに違います。乗用車は車の取扱説明書に書いてあります。 大型車は、東北運輸局の資料では、車両の「タイヤ空気圧ラベル」の近くに表示されているとしています。 また国土交通省の運輸局は、トルクレンチには校正(狂いがないかの確認)が必要だとも注意しています。
作業の記録は、脱着作業管理表に残す
国土交通省の運輸局は、運送事業者に向けて「タイヤ脱着作業管理表」の様式例を示し、作業と増し締めの結果を記録するよう求めています。 この内容に沿っていれば、自社の様式を使ってもよいとされています。お店の作業記録にも、そのまま使える考え方です。
- 車の登録番号、作業した人の名前、作業した日
- 清掃・点検・潤滑剤の塗布を、部位ごとに実施したか
- 締め付けたトルクの値
- 増し締めをした日と、その結果
- 確認した責任者の欄
記録があると、誰が作業しても同じ手順を通れます。 あとで問い合わせがあったときにも、どう作業したかを説明できます。
預かったタイヤの状態と、棚・期限をまとめて管理できます実際の画面と、棚札・預り証の印刷物を見られます
管理できることを見る乗用車の店でも、返すときに増し締めを案内する
国が公表している事故の数字と50〜100kmの目安は、大型車についてのものです。 乗用車について、国が決めた増し締めの距離の目安は見当たりません。 ただ、締めたあとに緩みが出る仕組みは乗用車でも同じです。
お店は、乗用車のお客さんにも、返すときに次のことを伝えます。
- しばらく走ったら、ナットの緩みを確かめてほしいこと(お店で増し締めを受ける日を決めておくと確実です)
- 走っていて、異音や揺れなど、いつもと違うと感じたらすぐに止まって連絡してほしいこと
- 自分で締め直すときは、車の取扱説明書に書いてあるトルクで締めること
何km走ったら来てもらうかは、車の取扱説明書を確かめたうえで、お店で決めておきます。 迷う場合は、大型車の目安(50〜100km)に合わせて案内すると、スタッフごとに言うことがそろいます。
そのまま使える案内文
返すときの声かけと、紙やメッセージで渡す文の例です。距離や連絡先は、お店に合わせて書き換えてください。
返すときの声かけ(乗用車)
「タイヤは規定の力で締めてありますが、走るうちに少し緩むことがあります。 50〜100kmほど走ったら、もう一度締め直しますので、お店に寄ってください。 その前でも、音や揺れが気になったら、すぐに止まってお電話ください。」
紙・メッセージで渡す文(乗用車)
本日はタイヤ交換のご来店、ありがとうございました。
ホイールナットは規定のトルクで締め付けましたが、走行するうちに緩みが出ることがあります。
50〜100kmほど走行されたころに、増し締め(締め直し)をいたしますので、ご来店ください。
走行中に異音・振動など、いつもと違うと感じたときは、安全な場所に止めて、すぐに当店へご連絡ください。
ご自身で締め直す場合は、お車の取扱説明書に書かれた締め付けトルクで締めてください。
紙・メッセージで渡す文(大型車)
タイヤ脱着作業のあと、50〜100km走行後を目安に、トルクレンチで規定のトルクに増し締めをしてください。 車輪の脱落事故は左後輪で多く起きています。運行前点検では、左後輪を中心にナットの緩みを確かめてください。 増し締めの結果は、タイヤ脱着作業管理表に記録してください。
よくある質問
- インパクトレンチで締めれば、増し締めは要りませんか?
- 要ります。国土交通省の運輸局が示す作業管理表の例でも、最後の締め付けはトルクレンチで規定のトルクに合わせるとしています。そのうえで、走ったあとに増し締めをします。
- なぜ左後輪に事故が多いのですか?
- 国土交通省は、左後輪に多いという結果を公表し、重点的に点検するよう呼びかけています。理由について、この記事では断定しません。点検では左後輪を特に念入りに見てください。
- お客さんが増し締めに来なかったら、どうすればいいですか?
- 来店の予定日を作業の記録に書いておき、過ぎても来ないお客さんには電話やメッセージで知らせます。来ない場合でも、自分で確かめる方法とトルクの値を伝えておきます。
参考にした資料
- 国土交通省「冬用タイヤ交換時には確実な作業の実施をお願いします!」(2026年10月1日)
- 国土交通省 同 別紙1「車輪脱落事故発生状況」(令和7年度)
- 国土交通省「ホイール・ボルト折損等による大型自動車等の車輪脱落事故防止について」(2017年11月14日)
- 国土交通省 同 別紙2 関係団体あて要請文(初期なじみによる締め付け力の低下、50〜100km走行後の増し締め)
- 日本自動車タイヤ協会(JATMA)「50km〜100km走ったら必ずトルクレンチで増し締めを!」
- 東北運輸局「大型車の車輪脱落事故防止対策『令和5年度緊急対策』について」(タイヤ脱着作業管理表・トルクレンチの校正)
- 東北運輸局「タイヤ交換作業管理表」(様式例)
- トヨタ自動車「タイヤ交換の手順」(対角線の順に2〜3回に分け、取扱書のトルクで締める)
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